このコーナーでは、カウンセリングを受けて頂いている方々へ、
カウンセリングで使っている言葉の説明や、その取り組みのプロセス。
また、僕が日々気付いた事などを中心にお伝えしていきたいと思っております。
日々の生活でのヒントや皆様の心のケアに役立てて頂ければ幸いです。


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「 相手の痛み 」


「 痛み 」という言葉を、カウンセリングでは結構頻繁に使います。


あまり重々しくとらえないでいただきたいのですが、
自分や人の心を理解する上では、解りやすい解釈の方法です。


・あなたの痛み
・過去の痛み
・昔からの痛み などカウンセリングでよく使いますね。  


今回は「 相手の痛み 」について考えて見ます。


ご夫婦や恋人、仕事の人間関係などのカウンセリングでは、
「 相手の痛みの方に目を向けてください 」などとお話しする事があります。


これはどう言う意味なのでしょう?


夫婦間で起こる喧嘩の例を出して、その心の中を見てみましょう。


(状況)
夫 :毎日仕事が忙しくほとんど家にいる時間がない。
妻 :始めての子育てで、不安を抱えながら一人で頑張っている。


ある日の事、いつものように夜遅く疲れきって帰宅したご主人に、
普段は主人の負担にならない様に、我慢して来た不安や心配を、
聞いて欲しいと妻が話し掛けました。

妻 「 あなた、ちょっと○○(子供)の事で聞いて欲しい事があるんだけど・・・」
夫 「 ああ、明日も早いからまた今度にしてくれないかな  」

妻 「 でも、あなたはいつも忙しくて話を出来る時間なんてないじゃない  」
夫 「 疲れているんだよ。毎日遅くまで仕事をしているのを解っているだろ!
    今度また時間を取るから今度にしてくれよ! 」 
 
妻 「 今度っていつなの!あなたお休みの日も疲れたってずっと寝てるじゃない!
    いつだったら私の話を聴いてくれるのっ 」
夫 「 仕方じゃないじゃないかっ 今仕事が大変なんだから 」

妻 「 仕事仕事って、あなたは仕事だけやってればいいし 楽 よね(怒)」
夫 「 なんだとっ 誰のためにこれだけ働いていると思っているんだ(怒)」


    ・・・ 嫌ですよね! 書いていても最悪の気分になっちゃう(笑)


どうしてこの たま にした会話が、
お互いを責め合う様な喧嘩になってしまうのでしょう?


人は、心の中に感情( 痛み )がないときに怒り出す事はありません。
二人の心の中にある感情( 痛み )をちょっと想像して見ましょう。


妻は彼を責めるために、話を始めたわけではないですよね。
いつも自分が抱えている不安やしんどさを少し聞いて欲しかっただけです。


では、なぜ彼女は感情的になってしまったのでしょう?


彼女は普段、忙しいご主人に迷惑をかけまいと子育てを一人で頑張っています。
子育てで感じるしんどさや不安などをずっと我慢しているわけです。


そんな我慢をする彼女の心の背景には、子育てや家事について、
「それぐらいの事は、全て自分ひとりでやれる様でなくてはいけない・・・」
そんな風に感じていたのではないでしょうか。
それでもしんどく感じてしまう自分をどこかで責めていたわけです。


こんな私じゃだめ・・・ これが彼女の心の奥で感じている 感情 です。


だから、彼の「 今度にしてくれ 」という言葉が、
まさに、「 そんなことぐらい君が解決するべきことだろう 」って、
責められてる様に聞こえたのです。


ご主人の方はどうでしょう。
どうして、彼女が聞いて欲しいと言っただけなのに怒り出すのでしょうか?


もし、彼の心の中がこんな風だったとしたらどうですか。


彼は、毎日毎日家に帰って疲れ果てた妻の顔を見ています。
もちろん、そんな彼女の大変さを解っていないわけではないです。


だけど、忙しくて自分は何も助けてあげられていない・・・
もしかしたら、自分だけ子育てから逃げてしまってるんじゃないか?
なんて、どっかで感じていたとしたら、
心の中では「 悪いな、悪いな、悪いな・・・ 」と感じ続けています。


そんな心の状態の彼が、疲れた顔した奥さんが口にした「 聞いて欲しい 」という言葉が、
まさに、奥さんの悲鳴の様に聞こえ、自分が責められてるって感じたのではないでしょうか。


二人ともが、心の中にある「 罪悪感 」に触れてしまって、
お互いが相手に「 責められる 」って感じてしまったのです。


こんな時、相手が心の中で感じている感情を「 相手の痛み 」と表現します。
この痛み(感情)があるから、人は責められてると感じたり、
そしてまた、それがいっぱいになって怒り出したりしてしまいます。


子供を育てる事自体、時に子供が求めていることに全てに答えられてない と。
自分を責めてしまうよな場合も少なくありませんよね。
この子育ての時期に、ご夫婦の距離が出来てしまうことは結構多いように思います。


では、「 相手の痛み 」の方を見てあげるとは、どう言う事でしょう?

例にあげた夫婦や、また恋人やその他の人間関係で、
どちらかが、相手が感じている感情や心の中に抱えている気持ちに、
気づいてあげることが出来たなら、もっと違ったコミュニケーションが出来るでしょう。


この夫婦なら・・・
夫が 「 君一人で抱えることではないけれど・・・   」とか、
妻が 「 あなたは私たちに本当に色々してくれているけれど・・・ 」とか、


相手の 痛み を少しでもやわらげてあげるそんな言葉を伝える事も出来るでしょう。
そうすれば、随分と違った会話になると思いませんか?


誰も、
一生懸命働いてくれている夫を、
必死で育児や家事をしている妻を、”責めてはいない”のです。


ちなみに、こんな事を書いている僕自身も・・・


その時その瞬間にこんな事が出来ていたなら、
うちの夫婦のケンカも、もう少し減っているでしょう。(笑)


その場その場では、自分自身の痛み(感情)の中に入ってしまって、
相手の気持ちに目を向ける事は、中々難しいことではあります。


そして喧嘩も、相手を理解するためのひとつのコミュニケーションです。


ただ、喧嘩や口論のあとに・・・


なんで、相手はあんなに怒ったんだろう? 
何を感じて、いつもあんな風に言うんだろう?
あんなに怒るってことは、いつもどんな感情(痛み)でいっぱいなのだろう?

こんな風に、相手の痛みや感情に目を向けて見るだけでも、
その後の関係は変わって来ます。


痛み ・・・


そんな感情をどこかで感じているあなたやその人の”心”は、
普段思っている以上に 優しさ がいっぱいなのですよ。






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