「お母さんはね、あなたたちがいたから、我慢してお父さんと別れなかったのよ」
親の口から聞きたくない言葉トップ3に入るセリフじゃないでしょうか?(笑)
僕たち子供たちも、自分が経験を積んで、そこそこ齢を重ねれば、
そのセリフを吐いたお母さんの心情や、本当のところの気持ちも推測してスルー出来る様になるのでしょうが、
若い時に聞くと、すごく嫌な気持ちなったり、怒りを感じることもあったでしょう。
やがて、自分自身も山あり谷ありの長い結婚生活を続けて行く中で、
今度は自分が「子供のために・・・」と感じてしまっていることに気付く時があります。
でも、
それはやっぱり” いけない事 ”なのでしょうか?
【もくじ】
●どうして「あなたのために・・・」が傷つくのか?
「あなたたちのために、別れなかったの」
もう一度さっきのセリフを、今度はお母さんという存在を抜きにして考えて見ます、
「あなたのことを想って○○したの」
「あなたのことを考えて○○しなかったの」
文字を並べて見ると相手を思いやる「愛」の言葉です。
それなのに聞かされた”子供”はどうして怒りを感じたり、傷ついたりするのでしょう?
ここはすごく大切なポイントなのですが、
親の方は自分の想いが大きくて、見落としてしまっていることが多いのです。
では逆に、私たち親が子供から同じセリフを言われたことを想像して見ましょう。
「私、お母さんやお父さんの状況を考えて進学はあきらめたの」
「私、お母さんたちの気持ちを考えて自分の好きなことは選ばなかったわ」
「お母さんのことを思って、私、結婚しなかったのよ」
さあ、どうでしょう。
それが本当に「愛」の言葉かどうかは議論があるでしょうが、
相手を思いやる気持ちや愛情が含まれていることには間違いないです。
なのに胸のあたりがすごく嫌な感じがします。
胸に何かが刺さる様に感じるかも知れません。
そう、罪悪感です。
相手の幸せを願う想いが大きければ大きいほど、
自分のせいで、相手は幸せを選ばなかった、選べなかった。と聞こえてしまうのです。
この気持ちは子供たちも同じです。
親が子供たちを想う以上に、子供は親が幸せであって欲しいと願っています。
それは小さければ小さいほど、純粋に、
また若ければ若いほど、強く。表面的な態度はそうでない場合が多いですが(笑)
だから僕たちが親から「あなたたちのために」と聞かされた時、傷ついたのです。
僕たちは相手の幸せを想う気持ちが大きい分、自分のせいでと言う罪悪感を感じてしまうのです。
●子供のためにと考えるのは間違い?
先日、あまり良いことではないのですが、
会話の流れで、うちの妻と下の子がこんな会話をしていました。
妻「もし、お母さんとお父さんが離婚したら○○はどつちと暮らす??」
下の子は少しだけ考えて、
「ぼく、お父さんと暮らす。なんでってお兄ちゃんはママの事が大好きやから、ママと一緒に暮らすやろ、だからぼくはお父さんと暮らす」
ちょっと意外でした。でも正直な気持ちを言うと選ばれた様な嬉しさがなかったわけではないです。
その後、妻が一緒に寝る時に布団の中でもう少し詳しく気持ちを聞くと、
お母さんはいろんな人と仲良くできるけれども、お父さんはそう言うこと苦手やし僕が一緒に居てあげるねん。
と言う気持ちだったらしいです。
ちょっとショックでしたが、でも彼の気持ちはすごく嬉しかったです。
妻は、よく見てるな~(笑)~と大笑いしていましたが・・・(怒!)
実は僕は、物心ついた時から、父と母が別居を繰り返していたので、その気持ちが養われなかったのか?
もしくは元々そう言う優しさを持っていないのか、あまり自分自身が親が寂しいだろうと言う気持ちを経験した覚えがありません。
でも、この仕事で出会った方や知り合いでも、兄妹がバラバラになって離婚した父と母とそれぞれと暮らす。
そしてその理由は、片方の親が寂しいだろうから。と言う話を聞くことが少なくありません。
子供ってすごいなあって感じます。
話を元に戻しますが、
下の子が僕と暮らすと言っても、お母さんと離れることが平気なわけでは決してないです。
誰よりもお母さんと一緒に居たいです。
そして彼はお兄ちゃんも大好きです。
でも・・・お父さんが寂しいんだったらお父さんと暮らす。
そう考えている、そんな気持ちを持ってくれている彼から、大好きなお母さんと大好きなお兄ちゃんを引き離すことが出来るでしょうか・・・
カウンセリングで、
「子供のことを考えるとやっぱりどうしても別れることが出来なくて・・・ でもそれって本当はよくないのですよね」
と尋ねられることがあります。
でも僕は、子供のために離婚しない。と言う選択をよくないことだとは思いません。
立派な愛のある決断です。
ただその選択を将来子供たちに伝える時があるとすれば、彼らが私たち親に対して抱いてくれている想いを知った上で話す必要があると言うことでしょう。
●どんな選択をしても
離婚経験がある僕は、
そんな子供の気持ちも痛いほどわかっている、それでも別れると言う選択しかない。それが離婚だと言うことを知っています。
だから、離婚は胸の中に素手を突っ込まれて心を握りつぶされる様な痛みを伴う経験になるのだと思う。
結婚生活の中には、妻として夫として、または男として女として、耐え難い苦しみを経験する時があるかも知れない。
そんな時、子供のことを考えて、子供のために別れないという決断をすることは決して間違いではないしすごく勇気のいることです。
もちろん、子供のために別れる。のも間違いではないです。
もっと言えば、お母さんが幸せになるために別れる。も、
お父さんがずっと一緒に居たくて別れなかった。もすべて間違いではありません。
ただ、子供のために、何か選んだ時、
それはあくまでも、子供の気持ちを守りたい、大切にしたい。
と言う『 自分の気持ち 』を自分が選んだことを知っていれば良いのではないでしょうか。
そしてそれを認めて欲しいとか解って欲しいという気持ちを少し緩めることが出来たなら。
結婚生活の形が様々あるように、離婚の形もいろいろあります。
私たちがどんな生活を選んだとしても、子供に対する想いが変わらないのと同じように、
子供たちも私たちが何を選択しても、私たちに対する想いも変わらないのです。
そのことを知っていれば、
あなたが何を選択しても、いけないことでも、子供たちを傷つけることもありません。
【プロフィール】
吉 原 直 人
1967年12月6日生まれ。いて座。A型。
自分自身が抱えた離婚問題をきっかけに心理学、カウンセリングの世界へ入っていく。
子供の頃の生い立ちや自分の心とじっくりと向き合い癒しを経験する。
その後カウンセラーとして、夫婦関係をはじめ、子育て、恋愛、様々な問題をサポート。
優しいく包み込む様に行われるカウンセリングは、心を癒し自然にその人本来の姿に戻していく。
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