さて、夫婦のお話を伺っていると、
パートナーに自分とは別に好きな人が出来たとか、
相手の浮気の問題で苦しまれていることが少なくありません。
自分のパートナーが自分以外の異性を好きなる。
また自分以外の人と恋愛関係になるなどは、普通に想像して見ても絶対に許しがたいことですし、
浮気をされた方は、言葉どおり身も心もずたずたになってしまいます。
恋愛時代の様に怒りに任せて別れることが出来れば、また立ち直っていくことも出来るのですが、
夫婦と言う関係では、子供、家庭、経済的な理由、また夫婦を取り巻く人間関係など、
相手が許せないからと言って、簡単に別れられない状況も出て来ます。
心の中では、相手とはもう一緒に居られないという気持ちでいっぱいなのですが、
現実問題として、その選択が出来ないとなると、
日々心の中に、様々な激しい感情を抱えながら結婚生活を続けるという、
本当に過酷な状況におかれてしまいます。
相手が素直に自分の非を認めて、浮気の相手と別れてくれればまだ救いがあるのですが、
なかなか簡単に別れられなかったり、また自分以外の人を好きになってしまったと言われたりすると、
絶望的な気持ちになってしまって当たり前です。
カウンセリングでは、まずその苦しい気持ちを吐き出していただきます。
いくら平静に保っていたとしても、心の中にはどこにも持っていきようのない怒りや悲しみ、
寂しさも悔しさも、辛い感情でいっぱいいっぱいになっています。
気持ちが苦しい時や、心に抱えた感情を癒すのは、まずは誰かに話すことなのですが、
当事者となんらかの関係がある場所(人)では、なかなか素直に自分の感情を聴いてもらうことが難しいと思います。
また、心の中に激しいたくさんの感情を抱えながら、これからの選択を冷静に考えることも難しいことです。
まずは、心の中にある感情を素直に話していただくことに徹していただきます。
何度も心のケアを繰り返しながら、次に取り組んでいただくことが今日のテーマである相手の気持ち。
いわゆるどうして相手は浮気をするのか?に目を向けていただきます。
心のケアはとても大切なのですが、でもそれだけではやはりこの問題を解決することは出来ません。
相手との関係で、なぜ?相手が浮気をしてしまうのか。
そのことがはっきりと見えてくれば、そこから今の状況を変容させていく可能性も見えて来るのです。
「浮気の心理」
浮気をしてしまう心理とはいったいどんな心境なのか?
また他の人を好きになってしまうということはどう言うことなのでしょうか?
ここでは、正しいとか悪いと言う判断、
またこうあるべき、当たり前、と言う様な期待も少し横に置いてもらった上で、
その”行動の心理”を考えて見たいと思います。
浮気の心理を説明するとき、心理学ではよく「 不足原則 」という言葉使います。
今の環境で何か足りないものを外の世界で補うという心理です。
今、渦中におられる方の中には、この言葉自体受け入れられないくらい傷ついてる方もおられると思うのですが、
もしも、自分が浮気をしてしまうとしたらどんな心の状態なのかを一度想像して見てください。
僕たちは、パートナーからあらゆるものをもらって”満たされている”時、
わざわざ外の世界に、何かを求めることはあまりない様に思いませんか?
私のパートナーは、私の欲しいものをすべて与えてくれている。
本当に私は愛されているんだな、大切にされているんだなあと、
いつも満たされた気持ちでいっぱいで、浮気してしまいました。
と言うのは少し想像できませんね。
これはあなたのパートナーも同じことだと思います。
では、何が足りなかったと言うのでしょう?
僕たちはパートナーから色んな”たくさんのもの”を欲しいと願っています。
恋愛やロマンスの時期などは、お互いが何よりも相手が最優先で、お互い満たされた気持ちでいられます。
しかし、夫婦生活がはじまると相手のことだけを優先するわけには行かなくなって来ます。
仕事、家事、付き合い、育児、実家の両親や親戚、また自分の趣味などなど、
相手のこと以外の世界のこともそれぞれ出てきます。
夫婦と言っても、それぞれの世界、またそれぞれの人生を生きているのは確かです。
カウンセリングで出会うご夫婦を見ていると、お互いの持っているそれぞれの世界は、双方でバランスを保っていることが多いです。
小さな子供さんを抱えて、全体の70%を「子育て」という世界で生きている状態の奥さんの場合、
その旦那さんの方も、全体の70%が仕事と趣味になっていたり。
また、夫が90%仕事に費やしていると、奥さんの方も90%が子育てと付き合いになっていたりします。
夫婦は相手に求める気持ちとそれ以外のものバランスを、お互い”自然に”とっているのですね。
ということは、片方が他の異性という世界を持っていたとすると、
もう片方はそれと同じ分だけ、何か”他の世界”を持っているとも言えます。
それでも僕たちは、愛する人にたくさんのものを求めています。
恋愛(感情)、いたわり、安心感、優しさ、甘えられる場所、自分を支えてくれる存在、寂しさを癒してくれる存在、
SEX、自分の価値を感じさせてくれる存在、つながり、一体感、自分を信頼してくれる存在・・・
自分の心に素直になって見ると、おそらく数えきれないほどのものをパートナーに求めています。
もちろんパートナーはそのすべてを満たしてくれる相手ではありません。お互いに。
でも、他の世界にそれを探しに行った相手にとっては、とってもとっても大切な”何か”だったのです。
問題のない夫婦でも、本当に相手が求めているものを与えられているのか?
と考えると、自分よがりな愛情は与えてられていても、なかなか相手のニーズを知っていることは少ないかも知れません。
相手が欲しかったものとは何だったのか?
ここを見ていくには、かなり心の成熟さが必要になって来ます。
少し、時間をかけて考えてみてください。
必ず何か見えてくるはずです。
「痛みと禁止」を癒す
相手の欲しかったものが見えて来た時、
それを与えてあげなかった自分を責めてしまう気持ちでいっぱいになってしまうことがあります。
その気持ちは否めませんが、自分を責めて相手に謝り続けたとしても上手くいくことは少ないです。
ここで注意していきたいのは、自分を責めすぎないことです。
責めることからは何も生まれることはありません。
では今度は、どうして私がそれを与えてあげることが出来なかったのか?を考えて見ましょう。
僕たちは、自分に許しているもの。または自分が持っているものしか人に与えることは出来ません。
例えば、自分が誉められた経験がない人は、他人を誉めることがなかなか出来ません。
また、自分が何かを禁止している人は、その禁止していることを人に与えることも難しいでしょう。
お金を例にとって考えてみてください。
お金に余裕が出来た時、少し豪勢な食事をしに行ったり、自分が前から欲しいものを買ったり、
「 お金を楽しむ 」ことを自分に許している人は、パートナーが同じ様にお金を楽しんでいても喜んで見ているでしょう。
でも絶対に無駄遣いはダメだとものすごく節約肌の「 お金を楽しむ 」ことを禁止している人は、
パートナーが少しでも無駄遣いをした様に感じたら、許せない気持ちになってしまいます。
僕たちは、自分に許していることしか人にも与えることが出来ないのです。
では「お金」の他には?
SEXは? 人に甘えることは? 寂しいって誰かに言うことは? 誰かに一緒に居て欲しいって言うことは? ・・・
何かを禁止していること。また否定的な観念の下には、僕たちが過去に経験した”痛み”が眠っています。
また、相手を信じてあげたいけれど心の中に大きな大きな不安(痛み)を抱えていたら・・・
そうです。誰かに何かを与えられない。とうことは別にいじわるをしていたり、夫として妻として出来が悪いから。
ではないのです。
そこには、それを与えられない。もしくは気づいて上げられなかった”心の理由”があるのです。
少し、自分ではなくて、他人で想像して見てくださいね。
若い頃から誰よりもまじめに働いて来て、でも何ひとつ”楽しみ”を自分に許可してこなかった人が、
少し自分に楽しみを持つことを許せたら、旅行に行ったり、美味しいものを食べに行ったり、友人と遊びに行ったり・・・
その人の人生はどの様に変わっていくでしょう。
絶対に人に頼ってはいけない。と眉間にしわを寄せて一人っきりで生きてきた人が、
子供にお願いごとをしてみたり、部下に頼って見たり、また友人に助けを求めて見たりすることをしたら・・・
その人の人生、また周りに居る人たちの心はどんな風に変わるのでしょうか。
また、心の中に大きな大きな不安をいつも抱えて生きてきた人が、
その不安を癒すことが出来たなら・・・ どんな人生に変容するでしょう。
今、あなた自身がその心の中にずっと抱えて来た痛みを手放していくことも出来るのです。
そしてその禁止、またその痛みを手放すことが出来た時、あなたの人生はどれほど豊かに変わるかを想像して見てください。
そして最後にもうひとつ想像してみてください。
もしあなたが逆の立場で、パートナーからどうしても欲しいのにもらえなかったものを外の世界に求めてしまった方だったとしたら、
次のうち、どの様なパートナーなら、もう一度その相手の元に戻ってもいいと感じることが出来るでしょうか?
① 間違った行動をしたあなたを責め続ける相手。
② 私が悪かったごめんなさい。と言い続ける相手。
③ 自分が本当に欲しかったものを、そしてそれを求める気持ちを”本当に”理解してくれた相手。
今あなたには、人生の大きな ふたつ の奇跡と恩恵を手にする機会が訪れています。
苦しいのはよく解っています。でも一緒に、少し前に進んで見ましょう。
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【プロフィール】
吉 原 直 人
1967年12月6日生まれ。いて座。A型。
自分自身が抱えた離婚問題をきっかけに心理学、カウンセリングの世界へ入っていく。
子供の頃の生い立ちや自分の心とじっくりと向き合い癒しを経験する。
その後カウンセラーとして、夫婦関係をはじめ、子育て、恋愛、様々な問題をサポート。
優しいく包み込む様に行われるカウンセリングは、心を癒し自然にその人本来の姿に戻していく。